─ 宇佐見蓮子が実在してくれないと困る。

目次

  1. 2次元に対しての実存性について
  2. 京都秘封ランドスケープ
  3. キャラクターの記号化とその先
  4. リアルクローズ秘封における日常の獲得
  5. 守破離とこれから

 

#2次元に対しての実存性について

もうずっと、宇佐見蓮子に「実存性」を得たいと思っている。

実存性というのは言葉の通りで、
「架空の存在ではなく現実に実在する」という意味である。
蓮子が実在してほしい。その一心だった。(メリーも)
その為にはまず、宇佐見蓮子についての理解を
深めなければならないように思う。

宇佐見蓮子は東方Projectに登場するキャラクターの一人で、
マエリベリー・ハーン(通称メリー)と共に
オカルトサークル「秘封倶楽部」に所属する京都の大学生である。
二人が生きる時代背景としては京都に遷都が行われた近未来とされている。
「近未来の京都の大学生」
僕は京都出身なこともあって、まずそこに焦点を置くことにした。

#京都秘封ランドスケープ

実在の京都の景色を背景にした絵を描いて、
京都の大学生である秘封をそこに立たせたら、
それは秘封が生きる世界で起こり得る景色の再現となるかもしれない。
つまりそれを描き疑似的に観測することによって
実存性を得られるのではないか。
絵描きとして、宇佐見蓮子への関わり方は
自分にはそれしか残されていないように思った。
背景の場所は近未来でも残っていそうな場所(神社や歴史的な観光地)を主に選ぶことにして、
そうして描き始めたイラストシリーズが「京都秘封ランドスケープ」だった。


↑画像クリックで京都秘封ランドスケープまとめページへ

僕はこの為に買った自転車で京都を闇雲に走り回り、蓮子の息遣いを辿った。とにかく手がかりがなかった。

「ここらへんなんか秘封っぽいな」

「多分蓮子ならこの路地を曲がりそう」

という不確かで曖昧な感覚だけを頼りに、
自分の中に形成された秘封っぽさに縋るようにして二人の足跡を探した。
そこには間違ったコンバートも多分に含まれるのだろう。
でももう、それを信じるしかなかった。
じゃないと蓮メリちゅっちゅと言うことでしか宇佐見蓮子と関われなくなってしまう。
これらの体験を経て得られたものは数えきれないけれど、
5年経った頃になって限界を感じ始めた。

結局僕がやっていることは自分が妄信した
「僕が考えた最強の秘封倶楽部の世界」を描いていただけだった。
勿論それでいいのかもしれない。
だってこれはただの2次創作であって別に好きにしたらいい。

でも僕はもっと実存性を得たかった。
なのに「大勢の人がいるはずの観光地に秘封の二人だけしか存在しない」絵を描いて、一体これのどこが現実なのだろうか。

実存性を得るには、もっと現実的な景色で、
そこに生きる秘封以外のその他大勢の人たちの暮らしがちゃんと在って、その世界に秘封がちゃんと向き合いながら溶け込んでいなければならないような気がした。
なので京都秘封ランドスケープではなく、他の方法を模索しようと一旦筆を置いたのだった。

#キャラクターの記号化

東方はキャラクターを記号化しているという話は度々目にします。
記号というのは見た目や恰好の特徴的な要素のことで、
例えば魔女帽かぶった全体的に白黒で髪だけ金髪の女の子なら、全然別のゲームであっても魔理沙に見えてしまうことがあった。
帽子を取った蓮子と頭襟を取った射命丸のバストアップを見分けることはやはり難しく、東方キャラを記号化された外見(つまり髪形や服装)でしか判別ができていなかった自分に気づく。
でも東方を経るとこうなるのは自然なことのように思っていて、原作の絵も毎回顔が違うので顔だけでの判別は難しかった。
なので服でキャラを判別する文化の源流って原作から既にあるものなように感じていて、その記号を用意してくれているからこそ多様なキャラ達を見分けられるように思う。

※歴代の霊夢達

#リアルクローズ秘封における日常の獲得

では、
次はその記号である服さえも替えてしまったらどうなるのか。
ハットも赤いネクタイもケープもしていない蓮子に対してどこに「宇佐見蓮子」を見出すのか。
その焦点こそが、蓮子を構成する一番深い部分で、さらなる実存性を得る為に必要な部分なのではないかと思った。
だから僕はそれを知りたくて……

つまり宇佐見蓮子は何者なのかを知りたかった。

紅茶とコーヒーどっちが好きなのか
洋室に住んでるのか和室が好きなのか
寒いと思ったとき、ダッフルコートを買うのかチェスターコートを買うのか、それともコートは買わずにマフラーで寒さを凌ぐのか。
服は新京極に買いに行くのか梅田まで出てLUCUAやHEPに行くのか、それとも近くのハナで済ませるのか。
それが知りたかった。
宇佐見蓮子の個人としての日常を知りたかった。

そこで次に始めたのが「リアルクローズ秘封」だった。


↑画像クリックでリアルクローズ秘封まとめページへ

リアルクローズ秘封は現実に売られている服を秘封に着せたイラストシリーズである。
服というのは日常生活を象徴するファクターのように思い、現代に実在するブランドの服の中で蓮子が買いそうなものを選ぶことを始めた。
それは蓮子の趣味や興味と財布事情を加味しながらも、それらしい選択の判断をいかに自分ができるのかという訓練の連続で、僕は男ということもあってこれがめっちゃ難しい……助けて……。
難しいけれど、幸い原作でも服が毎回違うということもあって、自分の中で服を変えて描くこと自体はすんなり受け入れられた。旧約酒場の現代的な身なりの蓮子の登場によってそれまでの記号がリセットされていたことも大きい。
勿論、この方法は科学世紀にはないであろう現代の服を着てるという現パロじみた矛盾を抱え続けることになる。
でもそれでも、そんな歪んだ方法でも日常を知る必要があった。
というより、もうそれを信じるしかなかった。
だって僕は科学世紀を生きていないのだ。
宇佐見蓮子だって本当はいない。
でもそれを認めながらも、諦めるわけにはいかなかった。
例え矛盾した方法だったとしても、宇佐見蓮子を感じとるためにはそこに縋るしかなかった。

#守破離とこれから

茶道の世界には「守破離」という考え方があるそうです。
「守」は型を守って基礎を学び
「破」はその後に自分に合ったより良い型にアレンジし
「離」はそれら二つから離れて自由になり、新しく自分の型を確立させるそうです。

京都秘封ランドスケープは主に身なりも原作のそれで、背景が京都で科学世紀にも残っていそうな景色を選んでいるという点に置いて、「守」と言えるかもしれない。
リアルクローズ秘封は現代と科学世紀との時代設定に矛盾を抱えながらも、自分に合わせた方法で実存性の発展を模索していき、「破」となるように思います。

「守」が京都秘封ランドスケープ
「破」はリアルクローズ秘封
「離」には到達していないので、まだどうなるかはわかりませんが、いつかそこにいけたらいいなと思う。
方法はまた変わるかもしれないけれど、実存性を得るというテーマは一貫してかえずにこれからも秘封倶楽部を描いていきたいです。

長くなりましたが、読んでくれてありがとうございました。
文を書きやすくするために蓮子にスポットを当てましたがメリーさんも好きです。

文:心太

hmrnuk

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