アルコールランプでのバーベキューに無限の可能性を感じた。
サイフォン式珈琲で使っているアルコールランプです。
理科の実験等で使う三脚をハンズで買ってきます。600円でした。
組み合わせます。
ランプに火を点け、そして100均で買ったスキレットを乗せます。
はい。
整いました。
極楽へのステージの完成です。
自分に為による自分だけの、
最小で最高のバーベキューが始まりますよ。
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手始めにタンです。
スーパーで買った豚タンです。
焼肉屋でみる大ぶりなそれとは違い、かわいいサイズである。
でもいいんです。小さなスキレットにピッタリでしょう? これでいいんです。
これがいいんです。
最小のバーベキューですから。
いい感じに焼けたら、任意のタイミングでいただきます。
食べました。
優勝です。優勝ってなんだ。
博多の塩でいただきました。
塩で、とか通な感じ気取ってるみたいですよね。
鼻につくかもしれません。
でも大丈夫です。
ここは自分だけの世界で、誰にも邪魔はされません。
目の前の小さくも力強いステージは、自分だけのものです。
小うるさく言う人は誰もいません。
すべて自分のものです。
好きにしていいんです。
豚タンは1パック20枚ほどの量だったのですが、なんとこれ、100円でした。
つまり一切れが5円ということになっちゃいます。
なっちゃうんです。
5円で優勝です。
ヤバイですよそれは。革命です。
勿論、単にフライパンで炒めただけでは革命は起こりません。
この最小単位に凝縮されたステージによる雰囲気作りがそうさせます。
だからこそ革命なのです。
どんどんいきますよ。
次は砂肝です。
音を伝えられないのが残念で仕方ありません。
自分だけの空間の静寂の中に、肉が弾ける音だけがこだまします。
砂肝は必ず薄切りにしてください。
アルコールランプの火力では、切らずにいるといつまで経っても焼けません。
でも、大丈夫です。
薄く切っても砂肝の歯ごたえは健在です。
砂肝はそんなヤワではありません。砂肝は切っても切っても砂肝です。
存分に切って焼きましょう。
微妙に生焼けな写真しかありませんでしたが、
このあとちゃんと焼けました。食べます。
またしても優勝です。
火力の話をしたところで薄々気づいているかもしれませんが、
これ、焼くのに時間が結構かかります。
ランプの高さを調節することで多少の調整はできますが、最大火力には限度があります。
正直たいした火力ではありません。
でもいいんです。
それがいいんです。
なにも急ぐことはありません。
ここは自分だけの世界で、何者にも憚れないのですから。
腰を落ち着けて、ゆっくりと一枚一枚、味わえばいいではありませんか。
そうです、スローライフです。
せわしのない現代社会の中では、そんな気持ちを忘れていたことでしょう。
今だけは時計を伏せて、小さく揺らめくランプの炎を見つめながら
目の前に流れる悠久の時とさえ思える時間をただ感じればいいのです。
場所だって問いません。
アルコールランプを置けるスペースさえあればそれでいいのです。コンセントだっていりません。
涼しくなってきた今の季節、ベランダで浸るのも良いでしょう。
そうして身をゆだねていると、驚くことに肉はいつの間にか焼けています。
アルコールランプのペースにすっかり馴染んでいる自分に気づくことでしょう。
さて、言わなくても分かっております。
アルコールランプでもしっかり焼けることを確認できたところで、このスタンスでの勝ちの未来を確信しました。
つまり、安心して飲むことができます。
キンッキンに冷やしておいた100均のビールグラス。メイド イン トルコです。
そして成城石井で謎のビールを買っておきました。
鳩っぽいデザインが愛くるしい。鳩ビールということにしましょう。
注いで、飲みます。
存じております、優勝です。
気のせいかトルコと鳩の味がします。嘘です。
しかし美味い。
美味いか、美味くないか、それだけで十分なのです。
小難しいことを思う必要はありません。
何者にも憚れない場なのです。
我スタイルでいいのです。
先ほど、場所はどこでも良いと書きましたが、自分はキッチン横でアルコールランプバーベキューをしておりました。
そこはちょうど冷蔵庫のそばなんですね。
なので、なんとなく、何気なく、冷蔵庫を開けました。
するとなんと、空だと思っていた冷蔵庫にジンジャーエールが一つ入っておりました。
これは奇跡です。
先ほどのビールが半分ぐらいに減ったところで、減った分だけジンジャーを注ぎます。
そう、シャンディガフです。
はい、もちろんです。
優勝です。
またしても優勝してしまった。隙を生じぬ二段構え優勝。
総なめである。
ジンジャーエールを注ぐことによってビール特有の苦味を抑えることができ、最高に優勝します。
さて、ドリンクも頂いたところで、そろそろ趣向を変えていきたいところ。
ここで登場するのが、そう、網です。
ミニサイズの網。またしても100均です。100均なんでもあるな凄い。
網を使うためスキレットをどけますが、安心してください。
鉄そのものであるスキレットは蓄熱性が非常に高く、ずっと熱いままです。マジで冷めてくれない。
さすがに新たに焼くことはできませんが、火からおろした後でも焼いていた肉をゆっくりと楽しみましょう。
そして網を乗せます。火強いなおい。
さらにどーーーん!!!
でかい。
千葉県産。ハマグリです。ご丁寧に加熱済み。
直火なだけあって、結構な速さで開きます。
パッカーーーン!!!
開いた瞬間、貝の中のハマグリ汁が噴き出してランプが消えてしまいました。恐るべし浜汁。
ランプの芯が濡れて火が点かなくなりましたが、芯を逆にしたらちゃんと点いてくれました。危ない。
とかなんとかしていたら、残った浜汁が沸騰してきました。
焼く前から加熱処理済みなので、いつでも食べられます。
でもどうせならアレが欲しいですよね。
はい、我らがキッコーマンさん。
料理を全くしないので醤油すらなかった我が家ですが、これのためだけに親指ほどの太さしかない小さいやつを購入。
そう、小さいやつ。ここが重要です。
特選された醤油を注ぎます。
はいーー勝ったな。風呂入ってくる。
当然の優勝。
もはやこれは海の味ですよ。海を食べている。
この15センチ四方ほどの小さなスペースで海が生み出されてしまった。
そして現れる海の残滓。
飲みたいですよね。
でも直火で焼いた貝の殻は超熱いんですよね。手では持てない。
そこで登場するのがトングですよ。
またまたしても100均。
手の中に収まってしまうほどのミニサイズのトング。
いやぁちょうどいいサイズ。大勝利です。
結局最後まで勝利しつづけてしまった。敗北を知りたい。
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これは自分至上、最高のバーベキュー体験だった。
重ねて思ったたことは、そのコンパクトさ。
アルコールランプとスキレットという、シンプルかつ小スペースなそれのみで、ここまで楽しめたことだ。
そしてそれを後押ししたのが、そんなミニマムさに合わせるかのようにちょうど良い肉の小ささであった。
ピッタリすぎるサイズ感のあまり、まるでこの為に用意された肉なのかと思ってしまった。
加えて小さい醤油や小さいトング。決して強くはないが十分な火力の小さなランプ。
ミニチュアじみたそれらも合わさり、
おままごとをそのままのスケール感で本気でやっているかのようなものに仕上がり、ただただ楽しかった。
高級な肉を食べているわけではありません。
冷静になれば、味だって別に大したことはないです。
でもそれ以上に、こんな設備で本当に焼けるのかという実験的な試みから始まり、
そして味わうことができたそれは、何事にも変えがたいものだった。
もしも興味が少しでも沸いたのでしたら、是非一度やってみていただきたく思います。